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pochiの雑記帖です。思いつきで書いたり書かなかったり。
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え~…
件の作品を読んだのですが。

正直な感想を書くと多分不愉快になる方がいらっさると思うので
隠します^^;

結論から言うとワタシはこの小説は好きではありません^^;

発表当時の論争のことや直木賞受賞の経緯は
読後に調べたので存じております。

それらを踏まえた上で感想を述べたいと思いますが
内容は批判的です。
その点お含みいただいて、興味がおありの方は「続きを読む」からドゾ。



この作品の宣伝に

「これほど深い愛情に、これまで出会ったことがなかった。
 いやそもそも、この世に存在することさえ知らなかった。運命の数式。命がけの純愛が生んだ犯罪。」

という煽り文がよくついているのですが。
崇高、という表現すら使われているのを見たことがあるのですが。

果たしてこれを純愛と言ってもいいのだろうか。
こんな美談のように語っていいものだろうか。
非常に疑問に思います。

ワタシは本作の主人公(彼が主体に描かれている部分がほとんどなので
主人公と言っていいと思います)、石神という男がまったく好きになれません。
異質すぎて、反社会的でありすぎる。

彼の行為は決して美談にしてはなりません。
擁護すべきなにものも有り得ません。
まったく無関係の人間を利用して無残にも殺したのですから。
天才的な数学者の論理性がそれをためらいなく行わせたという「論理」は
現実の数学者と言われる人々に対して失礼なのではないでしょうか。

時として科学は倫理を飛び越えてしまう、
そういう歴史的事実はなかったわけではありませんが
それを擁護することは決して正しいことではないと思います。
科学者こそが真っ当な倫理感を持つべきだということは
誰でも知っていることです。

もちろん東野氏はそういう感覚で書かれたのではないと思いますが、
ワタシが申し上げたいのは
湯川が同情し、その友情に苦悩する、といったほどの人物に石神が描かれているか、
という点において疑問に思う、ということなのです。

理解されがたい人物像を提示したのだ、
孤独な天才とはそうしたものだ、という描き方をしたかったのだと言われればそれまでですが
それでは小説の主人公としては読者に不親切すぎると思われます。

そういう人物であっても湯川が彼を痛むのは
自分と通ずるものを持つと感じた故なのか、
それとも純粋に彼の才能を惜しんだからなのか、定かではありませんが
湯川の行動も推理の核心を隠しておかざるを得ないために
非常に客観的に描かれているため
いまひとつその心情が迫ってこない。
草薙との友情まで失っても仕方ないと思うほどの
湯川の気持ちというのが理解しがたい。
故に本来湯川を通して伝わればよかったはずの
石神の人間性が浮き上がってこず、
読んでいる側も、それなりの彼の心により添えなければ
彼の行為を「愛」と置き換えることができません。

これを「無償の愛」などと言えるでしょうか。
それとも愛とは誰も救うことなどない、
互いに理解されがたい虚しいものだということが書きたかったのでしょうか。

こういう行為は
時代背景や置かれた状況でも随分受け止め方が異なってくると思うのですが
今この現代社会においては同情の対象にすることさえ倫理にもとるのでは。
彼は、彼女に対する脅威となる人物を殺したのでさえないのです。
まったく理不尽に、無関係の人間が
「起きてしまった不完全な犯罪」を「完全犯罪」にするために命を奪われた、
それが愛ゆえというならば
愛などなんの価値もありません。

孤独な男が隣人に対して抱いた庇護的で不器用な愛情が
彼に人間性があまりにも欠如していて、
他人とのまともな関係を築く能力に問題があったために
最悪の選択をして間違った方向へ突き進み、
結果として更なる不幸を「愛すべき」隣人に強いた、
そういうふうに思われて虚しいだけです。

違和感ばかりが募り、
終盤すべてを湯川に知らされ、
彼の行為に「こんなに愛してくれている」などと感極まる靖子にも
異様な感覚を覚えます。

作者は「靖子はありがたい、と思いつつもちょっとうっとおしいと思っている」
と自ら語っておられましたが
ちょっとうっとおしいどころではないと思います^^;
こんなことまでされてしまうと、
彼女に石神に対する愛情がなければ法外に負担なだけです。
新たな殺人を犯したことを知らなかったとしても、
身代わりに出頭された時点で「一生続く不気味なほどの重さ」だろうと思いますし、
ましてやあそこまでされた日には恐怖すら覚えると思う。
「一緒に償います、ごめんなさい」どころではないですよ^^;
あんた何をやってくれたの、頭おかしいんじゃないの、と思って普通だと思う。
怖いですよ。異常です-_-;
愛だなどとは思うまい、とワタシは思うのですが。
一点の曇りもないのは石神だ、と思うシーンに激しく憤りを覚えるのですが。


そして、「ガリレオ」のシリーズとしても科学的アプローチがウリのはずが、
いまひとつではないかと思われます。
あるいは東野氏の作風はむしろそうではなかったのであり、
TVドラマの雰囲気からワタシが誤解しているのかも知れないのですが
本作においては湯川の科学的知識、探究心といったものがキーになってはいません。
単に、彼が石神と旧知であり、
彼の行動としては不可解な、これまでの彼と違う点に気付いて疑問を抱き、
そこから発想しているのであり、
「不可解な事件を湯川が科学的に紐解いていく」という小気味よさはまったくない。
終盤明かされる新事実は衝撃的ではありますが
非常に納得のいかない、心地悪さを感じるもので
靖子の娘の自殺未遂など、更なる悲劇が提示され、
すべての瓦解を悟った石神の感情の発露でもって終幕となる。

大変に後味が悪いです-_-;

魂を吐き出していると草薙が感じたという〆ですが、
ワタシにはなんという馬鹿な男だろうという印象でした。
「数学的な天才」とはこんなにも社会性が欠如し、
他人の感情に思いの至らない愚かなものなのか、
そんなふうに描いていいのだろうか、と。
どうして石神に対して誰も怒りを覚えないのか、と。

彼の最大の誤算は、
そうした自分の「無償の愛」が
黙って享受されるものと読み違えた点にあるのでしょう。
こんなものは、彼に対して真に深い愛情を持ったもの以外には重荷にしかならない。
靖子は更に不幸になった。
石神の自己満足は幻想に過ぎないことを本人も知った。
数学の命題を解くことに一生の悦びを見出すどころか
彼は自分にはなにひとつ成しえないことを悟った。
ワタシにはそう思えます。
長編小説のくせに救いがなさ過ぎる。

作風には作者の人となりが反映されるものですが、
どうにも東野氏に魅力を感じなくなってしまった。

結果として思春期の娘の繊細な心に配慮が足らず、
追い詰めてしまったということに彼は何を思うのか、
それは作中では語られませんが
もちろん想像することはできます。
破綻後の彼は恐らく自分が間違っていたことを知るでしょうが、
あのラストは陳腐で丸投げに過ぎるのではないだろうか。


ある殺人を隠蔽するために、新たな殺人を犯した、
ただ、愛する人の罪を隠すために。

そういうプロットを描きたい、それだけがまずあって、
他があまりついて来られなかった不良消化作。
そういう印象でした。


いろいろに考えさせられた作品ではありますが、
正直申し上げて直木賞を取るほどのものとは思えませんでした。

そしたらやはり、
「この作品に対してというよりもこれまでの功績によって受賞」
という一文が調べてみたらでてきた^^;

直木賞ってそういうものなの(苦笑。

文壇の「政治」なんですね。ははは。


本格ミステリと言えるか否か、という論争がもちあがっていたようですが、
それについてはあまり論じても意味がない気がします。
むしろ「傑作と称されるに値するか」「各種の賞に値するか」ということが
代理論争された感があるのでは。


さて。
気になるのは映画の行方です。

なんとキャストは石神に堤真一。
うーん…カッコ良すぎなんじゃないの(笑。

フジTVで力入れて作るのだと思うので
結構期待はしていたのですが
元がコレだと相当脚色、改変しないと痛いのじゃないかと思います^^;

しかしおそらく原作よりは面白いものが出来るでしょう。
それだけは言えるような気がします。


言いたい放題申しましたが
感想というのはあくまで個人の主観ですのでご承知くださいませ^^;

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確かに・・・。
コメのお返事ありがとうございます^^

容疑者Xもう読んだのですかっ!!
は、早いっ!!
私なんて1ヶ月もかかったのにっ!

私も容疑者X読みましたが
確かに管理人様の言うとおり
この作品は不安定な部分が多く
なんというかすっきりしませんでしたね;

しかも管理人様の言うとおりやっぱ
後味悪かったですね・・・。
なんで美里が自殺をしたのかとか
後精子は結局どうしたのかだとか
なんかいろいろ言いたい感じだったかな。

あと管理人様も考えている石神の
行った犯行ですが精子を守るために
他の人間を犠牲にしたことを
数学者として許してはいけないみたいな
感じで言ってましたが
私としてはそこまでは考えていませんでしたねー。
管理人様のお言葉を読んでなるほどと
思いましたがでも私としては
やはり石神のしたことは確かに
悪いことですがでも私は同情はします。
それだけは正直本音です。

まぁいろいろと人の感想は
それぞれですので
どんな評価をしようと
思ったことを言ってるので構わないですよね^^

でもいろいろと私も言ってますが
私はこの作品は別に嫌いじゃありません。
でもやっぱ不満はある。(どっちだ)

映画は石神は堤真一がやるらしいですが
私も管理人様の言うとおり
堤真一じゃぁちょっとカッコよすぎでは
と思います。
なんていうか原作ではおっさんぽい
イメージなのにそれが一変して
堤真一とはどうかなーと思います。
精子は松雪さんがやるらしいですが
あれは合ってると思いますね。
フジTVは映画のヒットだけ考えて
肝心の原作への思いを消してますね。

まぁとりあえず堤真一さんには
石神っぽさを引き立てるように
演技にがんばってほしいですね。

お互いいろいろと感想は持っていますが
私は管理人様のはっきり物を言う
感想がすごく好きです^^
りん EDIT
at : 2008/03/15(Sat) 20:29:23
コメントありがとうございます^^
りんさん度々のご来訪ありがとうございます^^

辛め、というかはっきり批判的な感想なので
この作品に好感を持たれた方、主人公・石神に同情的な方には酷く読み辛かったのでは、と思うのですが、
わざわざお言葉をくださいまして恐縮です^^;

読みやすい文章だとは思いましたし
いくつかなるほどと思う表現にも出会えましたが
やはりワタシには「トリックありき」で書かれたように思え、
また何より作中で弾劾される、とまでは書かれなくとも
同情され、「深い愛ゆえ」と擁護される傾向の主人公の扱いに倫理的に激しく疑問を感じるため
世間で言われるほどの傑作とは感じられませんでした^^;

絶賛するものや少々の疑問を呈したものや、
様々な方の感想も拝読しました。
いろいろな捉え方でよいのはもちろんのことです。

ただワタシはやはり
意図的に隠されて終盤にあっと言わせるために用意されたトリックに騙され、
また石神の行動のすさまじさに圧倒されてしまって
彼の犯行があまりにも卑劣で冷血であることを忘れてはいけないと、
それを純愛、献身と呼ぶ怖さに思い至った次第なのです。

作者ご本人のコメントもいろいろ読みましたが、
彼自身が本作を
「究極の純愛」とか「自身の最高の推理小説」と評していることに違和感を覚え、
東野圭吾さんという小説家に期待も興味も失ってしまいました。
そのことはとても残念に思います。

映画に関しては
むしろ改変されていることを望みますので
その行方は楽しみです。

コメントありがとうございました^^
管理人p EDIT
at : 2008/03/16(Sun) 01:20:40
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